予防接種で感染対策、重症化予防
予防接種は、感染症から体を守ることを目的に行います。体に病原体の一部を事前に少量入れて免疫システムを訓練し、実際に感染した際に速やかに対処できるようにすることです。予防接種を受けることで、特定の感染症にかかるリスクが減少します。一部の感染症は、後遺症や合併症を引き起こすことがありますが、予防接種を受けることでこれらを未然に防ぐことができます。
また、多くの人が予防接種を受けることで、病気の広がりを防ぎ、社会全体を守ることができます。これにより、予防接種を受けられない赤ちゃんや免疫力が低下している方々も間接的に守られます。
予防接種を推奨する方
1.乳幼児や小児
乳幼児や小児:乳幼児は免疫力がまだ十分に発達していないため、定期的に推奨される予防接種を受けることが重要です。(かかりつけの小児科へご相談ください。)
2.高齢者
年齢とともに免疫力が低下するため、インフルエンザや肺炎球菌感染症などの予防接種が推奨されます。当院で接種可能です。お気軽にご相談ください。
3.慢性疾患を持つ方
心臓病、糖尿病、呼吸器疾患など、慢性疾患を持つ方は感染症にかかると重症化しやすいため、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種が特に重要です。当院の専門分野である循環器系の疾患でも、予防接種によって合併症を予防できるケースが多々あります。特に心臓病をお持ちの方は、予防接種をご検討ください。
4.妊婦さん
妊婦さんは、自身だけでなく胎児を守るために、インフルエンザ等の予防接種が推奨されることがあります。接種の時期や不安な点については、かかりつけの医師にご相談ください。
5.医療従事者
病院・クリニックなどの医療機関で働く方、医療従事者は患者さんや自分自身を感染から守るために予防接種を受けることが求められます。
6.国際旅行者
特定の国や地域に旅行する際には、その地域特有の感染症に対する予防接種が推奨されることがあります。(黄熱病やA型肝炎など)
7.免疫力が低下している方
HIV感染者や免疫抑制薬を服用している方など、免疫力が低下している方も、医師と相談しながら適切な予防接種を受けることが重要です。
一般的に健康な成人も、定期的な予防接種(例えばインフルエンザワクチン)を受けることで、自分自身や周囲の人々を守ることができます。予防接種は、個人の健康だけでなく、家族や社会全体の健康を守る大切な手段です。 接種に関する疑問や不安がある場合は、医師と相談し、適切な決定を行うことをお勧めします。
インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスから身を守るための予防接種です。インフルエンザは毎年流行する可能性があり、特に高齢者や慢性疾患を持つ方にとっては、重症化するリスクが高い感染症です。
インフルエンザワクチンは、一般的に不活化された(つまり、病気を引き起こさない)インフルエンザウイルスの成分が含まれています。インフルエンザウイルスは非常に変異しやすいため、ワクチンも毎年更新されます。その年に予測される流行ウイルス株に対応するためのワクチンが製造されます。
ワクチン成分が体内に導入されることで、免疫システムがウイルスを認識し、実際のウイルスが体内に侵入した際に速やかに対応できるようになります。そのため、ワクチンは重症化や合併症の予防に特に効果的です。また、予防接種を受けることで、インフルエンザにかかるリスクが減少し、仮にかかっても症状が軽くなることが多いです。
インフルエンザワクチンは、特に高齢者、妊婦、慢性疾患を持つ方、小児、そして医療従事者に対して推奨されています。また、家族や周囲の人々を守るために、健康な成人も毎年接種することが望ましいとされています。シーズン前に医師と相談して接種することをお勧めします。
インフルエンザワクチンの副作用
一般的に安全ですが、接種部位の痛みや赤み、軽度の発熱や倦怠感が生じることがあります。これらの副作用は通常軽度で一時的です。
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染症を予防するためのワクチンです。肺炎球菌は肺炎の原因菌として最も多くであり、特に乳幼児、高齢者、免疫力が低下している人々にとっては、重篤な感染症を引き起こす可能性があります。肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による感染症のリスクを大幅に低減できます。特に、重症化を防ぐ効果が高く、入院や死亡のリスクを減らすことができます。また肺炎だけでなく、肺炎球菌が引き起こす中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、敗血症など、さまざまな重篤な感染症の予防に効果があります。
肺炎球菌ワクチンには主に2種類あります。
- PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン)
特に乳幼児や免疫力が低下している成人に推奨されます。13種類の肺炎球菌の型に対して効果があります。 - PPSV23(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)
高齢者や慢性疾患を持つ成人に推奨されます。23種類の肺炎球菌の型に対して効果があります。
当院では、65歳以上の高齢者を対象としたワクチンを提供しています。高齢者は肺炎球菌による感染症が重症化しやすいため、PPSV23やPCV13の接種が推奨されています。とくに心疾患や糖尿病、呼吸器疾患などの慢性疾患を持つ方や、免疫抑制状態にある方は、肺炎球菌感染のリスクが高いため、予防接種を推奨しています。
肺炎球菌ワクチンの副作用
一般的に安全ですが、接種部位の腫れや痛み、軽度の発熱などが生じることがあります。これらは通常軽度で一時的です。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重篤な感染症を予防するために非常に重要です。特にリスクが高い方々は、医師と相談の上、適切なタイミングで接種することをお勧めします。
肺炎球菌ワクチンの定期接種
定期接種は65歳の1年間です。
※60歳以上65歳未満でも下記に当てはまる方は定期接種の対象となります。
- 心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害がある方
- ヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方
これまでは65歳で定期接種の機会を逃してしまった方も、70歳以降に「経過措置」として定期接種を受けることができましたが、経過措置は令和5年度(令和6年3月31日)で終了しました。
定期接種の期間が終了した方へ
65歳を超える方で期接種の対象外の方も、費用は自己負担になりますが、任意で成人用肺炎球菌ワクチンの接種が受けられる場合があります。
新型コロナウイルスワクチン
新型コロナウイルスワクチン(COVID-19ワクチン)は、ウイルスによって引き起こされるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)から身を守るために開発されたワクチンです。このウイルスは世界中で広範な感染を引き起こし、特に高齢者や基礎疾患を持つ方々にとって重症化のリスクが高い感染症です。
新型コロナウイルスワクチンは、感染リスクを減少させるだけでなく、感染した場合でも重症化や死亡のリスクを大幅に低減させる効果があります。また、接種者の間でのウイルスの拡散を抑制する効果も期待されています。
ワクチンの効果は時間とともに減少するため、追加接種(ブースター接種)が推奨されています。特に新しい変異株に対応するためのブースター接種が行われています。
ほぼ全ての成人が接種対象となっており、特に高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者などは優先的に接種が推奨されてきました。現在では接種対象が拡大され、若年層や子供にも接種が進められています。
新型コロナウイルスワクチンの副作用
ワクチン接種後に、注射部位の痛み、疲労感、頭痛、発熱などの副作用が報告されていますが、通常は軽度で数日以内に改善します。稀にアナフィラキシーなどの重篤な副作用が報告されていますが、これも非常に稀です。
風しんの抗体検査・予防接種
風しんの抗体検査
風しんの抗体検査は、風しんに対する免疫があるかどうかを確認するための検査です。風しんの抗体検査は、自分の免疫状態を把握し、必要であれば予防接種を受けることで、風しんの感染を防ぎ、次世代を守るための大切な取り組みです。
現在の実施期間は令和6年(2024年)4月1日から令和7年(2025年)3月31日までです。
検査の目的
風しん抗体検査は、以下の3つの目的で行われます。
- 風しんに対する免疫があるかを確認すること
- 先天性風しん症候群(胎児への影響)の予防
- 風しんの感染拡大を防ぐこと
検査をおすすめする対象者
特に以下の方に検査が推奨されます。
- 妊娠を希望している女性
- 妊婦の家族(配偶者やパートナーを含む)
- 妊娠を希望する女性と一緒に暮らしている家族
- 1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性(風しんワクチンを定期接種していなかった世代)
検査方法
- 採血:当院で血液を採取します。
- 抗体の測定:採血した血液を使って、風しん抗体の量を調べます。
抗体が少ない場合、予防接種が推奨されます。抗体が十分な場合は予防接種の必要はありません。
検査費用
仙台市では、以下の対象者に無料で検査を提供しています。
- 仙台市に住民票があり、以下のいずれかに該当する方が対象
- 妊娠を希望する19歳から49歳の女性(妊婦は除く)
- 風しんの抗体価が低い妊婦と同居している方
- 風しんの予防接種履歴があり、抗体価が低い妊娠希望の女性と同居している方
また、昭和37年(1962年)4月2日から昭和54年(1979年)4月1日までに生まれた男性も対象となっています。
注意点
- すでに十分な抗体が確認されている場合は、再検査は不要です。
- 検査時には本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)が必要です。
- 実施方法や対象者は自治体ごとに異なる場合があるため、お住まいの自治体の情報を確認してください。
風疹の予防接種(第5期定期接種)
風疹の予防接種(第5期定期接種)は、風しんの感染拡大を防ぐために国が行っている特別な予防接種制度です。この制度は、風しんの感染拡大を防ぎ、風しんによって赤ちゃんに障害が生じる「先天性風しん症候群」の発生を予防することが目的です。対象の方が期限内にこの制度を利用することで、風しんに対する免疫を得て、感染のリスクを下げることが期待されます。
対象となる方
この制度の対象は、1962年4月2日から1979年4月1日までに生まれた男性です。この年代の男性は、子どもの頃に公的な風しんワクチン接種の機会がなかったため、風しんに対する免疫を持っていない方がたくさんいらっしゃいます。
制度の期間
この制度の実施期間は2025年3月31日までです。2024年度が最終年度ですので、該当する方は早めに手続きを行うことをお勧めします。
2025年3月31日以降は、この制度の終了に伴い、抗体検査と予防接種が自己負担となります。
※ 費用は、抗体検査が約5,000円、予防接種が約10,000円です。
実施内容
- 風しん抗体検査
対象者は、無料で抗体検査を受けることができます。この検査で、風しんに対する抗体の有無が確認されます。 - 風しん予防接種
抗体検査の結果、抗体価が低いと判断された場合には、無料で予防接種を受けられます。
具体的な手続き方法
- クーポン券の利用
市区町村から対象者にクーポン券が郵送されます。このクーポン券を使うことで、抗体検査と予防接種が無料で受けられます。 - 医療機関での実施
検査や予防接種は、各自治体が指定した医療機関で受けることができます。クーポン券を持って医療機関に行き、手続きを行います。
風しんに対する免疫を持っていない方が適切に予防接種を受けることを支援するもので、風しんから自身や周囲の人を守るために大切な取り組みです。対象の方は期限内に抗体検査と必要な場合は予防接種を受けることをお勧めします。
HPVワクチン
中学生以上の方が対象
HPVワクチンは、子宮頸がんの主な原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンです。ワクチン接種により、子宮頸がんのリスクを大幅に低減できることが海外の研究で示されています。また、早期の接種(若年層での接種)がより効果的であることが報告されています。
HPVワクチンは子宮頸がん予防に有効な手段ですが、100%の予防はできません。そのため、ワクチン接種後も定期的な子宮頸がん検診を受けることが推奨されます。ワクチン接種と定期的な検診の両方を行うことが、子宮頸がん予防の最も効果的な方法とされています。
当院では、中学生以上を対象としたHPVワクチン接種を行なっています。
HPVワクチンの対象者
- 小学校6年生から高校1年生相当の女子が定期接種の対象です。
→ ※ 当院では中学生以上を対象とさせていただきます。 - 標準的な接種期間は中学校1年生(13歳になる学年)の女子です。
HPVワクチンの種類
現在、日本で使用されているHPVワクチンは3種類あります。
- 2価ワクチン(サーバリックス)
- 4価ワクチン(ガーダシル)
- 9価ワクチン(シルガード9)
効果
- HPVワクチンは子宮頸がんの原因となるHPVの感染を予防します。
- 9価ワクチンでは、子宮頸がんの原因の約90%を防ぐことができます。
接種スケジュール
- 15歳未満で初回接種する場合:2回または3回の接種
- 15歳以上で初回接種する場合:3回の接種が必要
公費接種
- 定期接種対象者は公費(無料)で接種を受けられます。
- 令和7年(2025年)3月31日までは、キャッチアップ接種として対象年齢を過ぎた方も公費で接種可能です。