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動脈硬化

動脈硬化とは

血管には心臓の動きに合わせてポンプのように収縮して血液を送り出す役割があります。血液を運ぶための単なる「管」ではなく、しなやかな血管の構造があるからこそ、血液を体の末梢まで送り届けることができます。

動脈硬化は、血管が本来の弾力性を失ったり、血管の内側にコレステロールなどが沈着して血管が狭くなることで血液の流れが悪くなっている状態です。

20〜30代のうちから進行し、初期段階では自覚症状はほとんどありません。症状が出るのは重症化してからで、ある日突然、命に関わる病気を引き起こすことがあるため注意が必要です。少しでも動脈硬化の進行を遅らせるためには、発症リスクを高める危険因子をできる限り減らすことが大切です。

動脈硬化の原因・危険因子

動脈硬化の原因・危険因子|循環器内科動脈硬化の危険因子となるのは、

  • 高血圧症
  • 脂質異常症
  • 糖尿病
  • 内臓型肥満

などの病気をはじめ、

  • 喫煙
  • 運動不足
  • ストレス

などの生活習慣があげられます。

動脈硬化は加齢に伴って誰にでもある程度はみられるようになるものですが、これらの危険因子の数が多ければ多いほど、動脈硬化の進行が加速度的に早くなることもわかっています。

中でも、脂質異常症は動脈硬化を促進させる要因として特に注意が必要です。

※ 詳しくは「脂質異常症」のページをご覧ください。

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動脈硬化によって起こる命に関わる病気

動脈硬化によって生じる疾患は

  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
  • 脳血管疾患(脳卒中;脳梗塞・脳出血など)
  • 大動脈疾患(大動脈瘤など)
  • 閉塞性動脈硬化症

以上があげられます。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)とは、心臓の筋肉(心筋)に十分な血液が供給されなくなることで発生する疾患の総称です。心臓を養う動脈から枝分かれした血管を冠動脈といいます。冠動脈には心臓に血液を供給するという重要な役割があります。虚血性心疾患はこの血管が動脈硬化によって狭くなったり、詰まったりすることで血流が制限され、心筋に酸素や栄養が行き渡らなくなるために起こります。

虚血性心疾患は、「狭心症」と「心筋梗塞」の大きく2つの疾患に分かれます。

狭心症は、十分な血液が供給されなくなることで発生する一時的な病態です。心筋への血流が一時的に不足し、胸に痛みや圧迫感を感じることがあります。狭心症は、心筋梗塞の前兆となることがあり、適切な診断と治療が必要です。

心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まり、心筋に十分な酸素と栄養が供給されなくなることで、心筋の一部が壊死(死滅)してしまう状態を指します。冠動脈の血流が突然途絶えるため、早急な医療対応が必要です。放置すると心臓の機能が著しく低下し、命に関わる重大なリスクを伴う疾患です。

狭心症と心筋梗塞は、どちらも心臓に関連する疾患であり、胸の痛みを伴うことが共通していますが、狭心症は安静や薬で症状が緩和されることもあるのに対し、心筋梗塞は突然の強い胸痛で、痛みが長く続き、安静や薬で改善されません。直ちに医療機関での治療が必要です。

脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳の血管に関する異常や障害によって、脳に十分な血液が供給されなくなることで発生する疾患の総称です。これにより、脳の一部に酸素や栄養が届かなくなり、その部分の脳細胞がダメージを受けたり、死滅したりすることがあります。この脳血管疾患の代表的な病態が、脳卒中です。脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳内の血管が破れて出血して脳内に血液が漏れ出す「脳出血」があります。

心臓にできた血栓が流れ出てきて、脳の血管に詰まる脳梗塞を、心原性脳梗塞といいます。急激に症状が起こりやすく、重度になることが多いです。この病気は「心房細動」と呼ばれる不整脈の一種が大きく関連します。

心房細動はこちらへ

大動脈疾患

大動脈は心臓の左心室から全身へ血液を送る体の中で一番太い血管です。この大動脈に生じる病気を、大動脈疾患といいます。

大動脈疾患の中でも、動脈硬化によって発症するリスクが高い病気が大動脈瘤です。全身に血液を送り出すための大動脈の壁が瘤(こぶ)のようにふくらむ病気です。心臓から出てすぐの所に瘤ができるものを胸部大動脈瘤、おへその下で左右に分かれる手前のところに瘤ができるものを腹部大動脈瘤と呼びます。

大動脈瘤ができても自覚症状はほとんどありませんが、瘤がある程度以上まで大きくなると、破裂の危険があります。破裂すると症状は激烈で、激しい痛みだけではなく大量の内出血によってあっという間にショック状態に陥ります。瘤の直径が5cm未満の場合は降圧薬で血圧を下げる治療を行います。一方で、5〜6cmまで大きくなったら、破裂するリスクが高くなるため、手術が必要になることが多いです。

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症は、主に下肢(脚)の動脈が動脈硬化によって狭くなったり、閉塞したりすることで、血流が不足し、酸素や栄養が十分に供給されなくなる病態を指します。これは末梢動脈疾患の一種で、脚の筋肉に十分な血液が届かず、歩行時に痛みや疲労感が生じるのが特徴です。

歩行や運動時に、足やふくらはぎに痛みやけいれん、しびれ、疲労感を感じる症状を間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。しばらく休むと症状が和らぎますが、再び歩き始めると症状が戻ることが特徴です。

病気が進行すると、安静にしているときでも足やつま先に痛みが生じることがあります。特に夜間、横になっているときに痛みが強くなることが多いです。

足(脚)の皮膚が冷たく感じたり、蒼白や青紫色になることがあります。また、皮膚が乾燥し、傷が治りにくくなることもあります。

また血流が極端に不足すると、皮膚に潰瘍ができたり、組織が壊死する(壊疽)ことがあります。これは特に足の指やかかとに起こりやすいです。壊疽は、感染症や失肢(足の一部の切断)のリスクがあるため、緊急の治療が必要です。

動脈硬化の検査

動脈硬化自体は症状を感じることは少なく、それに伴う疾患の症状で気付くことがほとんどです。そのため、検査で危険因子や動脈硬化の程度を調べ、疾患の発症や進行を防止することが大切です。

足の血圧でみる動脈硬化の検査

動脈硬化は、部分的に起こるものではなく、全身の血管に及びます。足の動脈硬化が進んでいれば、脳や心臓の周囲の血管の動脈硬化も進んでいます。足の動脈が狭くなっている人は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを合併しやすく、早期の診断、治療が重要となります。

末梢血流超音波検査

末梢血流超音波検査(下肢血管超音波検査とも呼ばれます)は、動脈硬化の評価を行うために、特に足の動脈の血流状態を調べる検査です。超音波を使って血管の内部の様子や血液の流れをリアルタイムで観察することができます。主に、足の血管が狭くなっている(狭窄)や閉塞している状態を確認するために行われます。

この検査は、特に下肢(足)の動脈硬化性病変を検出することが目的です。動脈硬化が進行すると、足への血流が不足する「閉塞性動脈硬化症」と呼ばれる状態になることがあります。

超音波検査のメリットは、痛みがない非侵襲的な検査であるという点があげられます。また血管内の血流状態をリアルタイムで観察できるため、動脈硬化の進行状況を迅速に把握できます。足の血流障害がまだ軽度な段階で発見できるため、早期の治療介入が可能です。

末梢血流超音波検査は、動脈硬化の診断や治療計画を立てるための重要な情報を提供する検査です。動脈硬化のリスクがある方や症状がある方は、医師と相談の上、適切な検査を受けることが推奨されます。

その他の動脈硬化の検査

動脈硬化の程度やそれに伴う病気の診断、発症の危険度をみていきます。頸動脈エコーは、動脈硬化の検査として最初に行われることが多い検査のひとつです。

また、合併している病気の状態などに応じて、さらに精密検査が必要となる場合があります。

眼底検査で目の網膜の状態を調べたり、CT検査、MRI検査などの画像検査、カテーテルから造影剤を注入して心臓のまわりにある冠動脈の状態をみるX線検査や心電図検査などを行う場合もあります。

健康診断で指摘を受けた方

健康診断や病院での初診は、まず異常を発見することが最大の目的です。これをスクリーニング検査といいます。健康診断で、LDLコレステロールや中性脂肪の値が「やや高め」「高い」と指摘された方は、動脈硬化のリスクがあるため放置するのは大変危険です。

当院では、健康診断(一次検査)で指摘を受けた方を対象とした二次検査(精密検査)を実施しています。

二次検査では、主に血管の状態(厚さ・狭さ)や、血管の機能(硬さ)を調べる検査が行われます。健康診断で健康状態に何らかの問題がある(またはその可能性が高い)と指摘された方は、放置せずに二次検査を受けましょう。

動脈硬化を予防するためには生活習慣の改善が必要不可欠です。食生活の改善や運動で進行を抑えることができるため、できることから実行することが大切です。しかし、闇雲に取り組んでも、コレステロールや中性脂肪の値は改善しません。どの値が高いのか(低いのか)によって重要視するべきポイントは変わってくるので、まずは受診して自分の体の状態を把握し、自分にあった対策を行うことが重要です。